Yuta Uozumi
3 min readDec 11, 2019

『雨上がりの黒に耳を澄ます 動き、掠れ、震え、極小の空気』

大阪の+1artというギャラリーで、「小さいわたしたち」展が行われている。そこに僕の作品が展示されている。残念ながら会期中に僕は現地には伺えないけども。

企画は野心的なもので、50人もの作家ひとりひとりが、与えられた小箱に作品を収め、それらが、会場の壁面を埋め尽くすというものだ。

収めるというより小箱そのものが作品化され、各自が小さな世界を形成し、それが群生している。

僕は光栄にもその中で01という作品番号をいただくことになった。制作完了までは、例によって時間や制約との格闘があり、結果的に、自分史上『最小』のサウンドアート作品が出来上がった。

箱は小さな、自律した音響装置になっている。

装置内部にはプログラミング上の仮想生物(人工生命/エージェント)が存在している。

彼らは互いに捕食・被捕食の関係にあり、計算メモリ上の資源をやりとりし、模擬的な生態系を形成する。

個々のエージェントには、現地でテストを繰り返し、注意深く個性を設定した。

視野の広さや俊敏さ、サイズなどが異なる複数の「種」が箱内部に共生している。

彼らの様態やその系が生み出すバランスの変化が、音響を生み出す。

この装置を起動して半日も放置しておくと、領域や存在を生き残ったエージェント達が分割する「棲み分け」状態になる。

こうやってエージェントが生み出すパターンを利用して、音を生成する。種の分布は日によって異なり、日によっても音の系は変わっていく。

1強だけが残る弱肉強食による「適者共存」にはならない。万事そうだが、系が集束してしまうと、変化や状態の遷移/多様性が失われて、心地よい音響にはならない。完成された構造は完成された音楽を確約しないのだ。

音の設計の際、自分の主観や作家性は排除した。空間に寄生する匿名性の高い音とそれによるビオトープ。

「たゆたう」音景。生命版の獅子脅し。

僕なりのアノニマスデザインを、音として実装した。

ここで言及したのは、あくまでもアルゴリズム(=仕組み)であって、体験ではない。是非来場して欲しいと思う。

小箱の中で何が起こり、どのように知るのか、微小な音の風景がどう空間を満たしているか?その場限りの体験になっている。

実際僕は会期中、本人不在ではあるものの、ソロパフォーマンスをしている気分でいる。

今週土曜日(2019/12/14)までだけども。少しでも興味がある人は、来訪いただければ幸いである。

Yuta Uozumi
Yuta Uozumi

Written by Yuta Uozumi

電子音楽家、メディア芸術家。バルセロナ、ベルファスト、コペンハーゲンなど、国際的な公演を行う。2013年、「SjQ++」としてアルス・エレクトロニカ Award of Distinction受賞。慶應SFCにて特任講師、東京の制作会社にてシニアプランナー兼務。『産・学・芸』境界民。

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